6月11日(日)12日(月)、アフリカ・マダガスカルからJICA農業研修生が多気町丹生を訪ねました。
マダガスカルは、日本の1.6倍の面積、世界で4番目に大きな面積をもつ島国、『星の王子さま』で知られるバオバブの木など、独自の進化を遂げた多様な動植物が生息する豊かな国だそうです。
4日から来日した8名の研修生は、10日間にわたり、地方自治やJAの役割、マーケティング等について講義を受けました。
今回の多気訪問では、JICA研修でははじめてとなる、あじさい祭りを見学。いつも研修をコーディネート、同行される(有)人の森の野田氏も、地域のにぎわいを肌で感じ、非常に興味深げな様子でした。
今年21回目を迎えるあじさい祭りは、地域の元気な人々が勢ぞろいする勢和の一大イベントです。草の根で活動するNPOだけでなく、行政関係者、商工会メンバー…、さまざまな立場の人が、地域を盛り上げよう!と集まります。
目玉の一つに、200年前に整えられた灌漑水路、立梅用水を中学生が手漕ぎするボートがあります。水路沿いにずらりと咲くあじさいを眺めながらのボート下りは、言わずと知れた風物詩。
この立梅用水こそ、国の登録記念物であり、世界「かんがい施設遺産」に登録された、非常に由緒ある施設なのです。
2日目の研修では、研修生は水土里ネットの事務所を訪問。立梅用水の生みの親である西村彦左衛門の掛け軸を囲み、歴史や用水活用について講義を受けました。
研修生からは専門的な見地からはもちろんのこと、「どのように人々のモチベーションを高めるのか」「どのように利害調整をしているのか」など、活発な質問があがりました。
「コミュニティ」「住民自治」「当事者意識」…
度々研修の中では使われているキーワードだと思いますが、研修生の表情を見ながら、立梅用水が大切にしてきた価値観は、簡単に言葉で説明して伝えられるものではないなぁと感じます。
農業の技術や仕組みは目に見えても、「自分たちの暮らしをどう自分たちで支え、次世代につないでいくか」という、その形に至るまで、目に見えない模索の軌跡の方が、ずっと多いはずなのです。
水土里ネットの高橋さんは200年の歴史を引き継いで、自分たちは300年後に何を残していけるかを考えているといいます。
だからこそ今日の立梅用水は、農業灌漑設備という機能以上に教育活動や文化活動として「多機能性」を重要視した取り組みを行っています。
一見すると、あじさい祭りは農業とは関係なく映るかもしれません。
高橋さんはこう言います。
「ここの農業を支えているのは、日本の文化やから。外国の農業の専門家から見れば、何で祭りなんてするんや?と思われるかもしれん。それで事業収入があるわけでもない。それでも、たくさんの人があじさい祭りに来て、にぎわって、子どもたちが農業用水でボート漕ぎして。その雰囲気を感じて、何か一つでも国に持ち帰ってもらえたらいいなと思います」
農業研修の一環としてのあじさい祭りにもお邪魔しました。
さまざまな地域団体が一堂に小道に並ぶあじさい祭りでは、JAさんや消防団のブースをお尋ねして
出店の理由や内容をお聞きしました。
勢和図書館の出店にも驚きながら、司書さんと地域との関わりの深さから、
将来司書さんになりたいという子どもたちも多い、というお話に深くうなずいていました。
研修生の皆さん、中学生ボランティアとの交流も含め、地域づくりの生の現場に触れ楽しんでいらっしゃいました。
地元受け入れ団体の皆さま、本当にありがとうございました。